城所理事長コラム 〜第41回〜 「T九段とUさんの発信基地 (後編)」 ところで、そんなある日、サラリーマンの客が多い当碁会所に、ジーパンなんかを履いた若者連れが現れました。そして、いきなり「できれば日曜日、ここを貸していただけませんか。バックギャモンというゲームの例会会場として使わせてもらいたいんです」というのです。 それが日本名で「盤双六」という遊びなのだとはあとで知ったことで、そのときは「えっバックギャモン?」と初めて聞くなにがなんだか分からない名前の、それも場違いの若者風情からの言葉とあって、いかがわしいバクチを想像したものです。 あのねぇと断りかけた、ちょうどそのタイミングに、一本の電話がかかってきました。受話器をとると「Tです。今若い人がバックギャモンの会場を借りにうかがっていると思いますが、彼らはバックギャモン仲間の代表をしているS君とN君といいます。ボクの趣味はバックギャモン。これは素晴らしいゲームなんですよ。貸してやっしてやっていただけませんか。」と こんな調子の方です、T先生は。先生には恩義がありますから、そう言われては断る理由はありません。というわけで、わたしの碁会所は日曜日のみ、たいていバックギャモンの会場になります。 わたしは、囲碁についてはどれだけやっても上達しませんが、このバックギャモンに関しては趣味の一つに加わって、新しい世界を開くことになりました。そのことはまた後述します。 それより、これまたM先生がらみで、この碁会所は意外な展開を見せることになりました。 Uさんという名をご存知の人も多いと思います。 囲碁の女流棋士です。いまやアイドルとしても人気で、そこでそういうチャーミングなお嬢さんを当碁会所のマスコットにできないだろうかと考えました。ときどき来てもらえれば、客層がさらに広がること間違いなし、と。 彼女が、わたしのいわば慶應義塾大学の後輩にあたるということは分かっていましたが、それよりT先生からの紹介のほうが有効だろうと、先生の了解を得てUさんに電話をとりました。 T先生の口添えがありますから、案の定とんとん拍子に話は進みましたが、最後に「じつは、わたしも慶応出身ですが、息子のSも慶應出身で藤沢キャンパスの環境情報学部だったんですよ」と言いましたら、とたんに彼女の口調が変わって、「えっ、じゃあ城所さんは、Jさんのお母様だったんですね」と嬉々とした声が電話線から伝わってくるではありませんか。 城所の「城」をとって「J」というのが息子のニックネームだったようで、同じキャンパスで親しく付き合っていた仲だったということを彼女の言葉で知りました。 そして「Jさんのお母様の所なら喜んで」というわけで、それからというものアイドルUさんが指導碁を打ってくれるということが知れわたり、おじさま族も若いサラリーマンも、その日はギャラリーが一杯で、もう押すな押すなの盛況ぶりです。 彼女は、とっても気心がやさしく素直な明るい女性で、アイドルと目されている理由がわかるような気がします。しかも庶民的なカレーうどんとお新香が大好きだということを、そっと読者にお教えしておきます。 そして環境問題にも強い関心を示していて、ひょっとしたら彼女が追求したいと思っている地球温暖化防止と都市グリーン化のための屋上緑化の運動が、赤坂の街づくりになんらかの役割を果たす日がくるかもしれないと期待しているところです。 商店街振興組合 エスプラナードアカサカ 理事長 城所 ひとみ 商店街振興組合エスプラナードアカサカ 〒107-0052 東京都港区赤坂3-10-5 赤坂クインビル4階 TEL:03-5561-9125 FAX:03-5561-9128