城所理事長コラム 〜第32回〜 「異色メンバーによる、異色の商店街です 前編」 わたしがかかわる商店街振興組合エスプラナードアカサカやトーク赤坂21には、まだまだ異色のメンバーがいます。たとえば、Kさんもその一人です。 当時まだ赤坂田町通り会といっていた頃、その役員に加わっていただきました。トーク赤坂21のメンバーでもあります。Kさんは、高級クラブ「貴族の朝」のオーナーです。 そのクラブには客として足を踏み入れたこともありませんでした。でも、考えました。繁華街にある商店街では、ふつうクラブやバー、スナックなどといった水商売の人を取り込もうとはしないと聞きました。それはおかしい、というのがわたしの印象でした。赤坂でも、ご存じのように、いわゆる水商売の店がずいぶん多く、約八割の店が料飲関係です。つまり水商売も、立派な商店街の構成員なのです。 赤坂の街でも、夜の顔は大事な側面です。そういう夜の商売をなさっているからこそ、ひょっとしたらいちばんこの赤坂の街の表情に通じておられるかもしれないのです。そういう人たちからナマの声を聞かないで、はたして「赤坂を」語ることができるでしょうか。 そういう点で、Kさんには赤坂田町通り会の場でも、またトーク赤坂21の場でも、わたしたちが見落としているところを指摘されたり、また意外な提案をいただいたりすることができます。 たとえば商店街で、装いを新たにする道路に設置する街路灯のデザインを最終決定しようという段階になったときのことです。いろいろ議論しあって「では、そういう線でいきましょうか」と結論に近づきそうになりました。すると、それまで寡黙だったKさんが「うーん」とうなりだしたのです。これは、Kさんが一言いいたいときの癖です。 その会議では、デザイナーから提示された絵柄が目の前に並べられ、これがいい、いやそちらがいいね、いやいやあちらがいいじゃないかと、時間をかけて議論していました。だんだん目も頭も霞んだようになって、みんな面倒くさくなっていたと思います。いい加減おしまいにしたいという空気もただよっていました。 そして、しだいに「しょせんわれわれは素人なんだから、いろいろ目移りもし、どれがいいか決定的な判断をしようがないじゃないか。それより、ダメな候補を落としていこうよ」と、いうなれば消去法で残ったものにしようという方向で事を納めたいという空気になってきたのです。 そういうタイミングでのKさんの「うーん」でした。そして「そういう(消去法の)決め方というのは、どうも手順の問題としてだけ事を処理しようとしているような気がします。われわれは明確なコンセプトを持って、その目標に合致するデザインを決めようとしているのですから、あくまでも、どれがいちばん良いのかという判断基準を外してはいけないと思うのですが・・・」とおっしゃるのです。 これには一同、思わず身を正しました。そのKさんの「目的を忘れて、手段で妥協してはいけない」という指摘で、わたしたちは日を改めて頭も目もクリアなところでとことん議論し、全員が納得できる街路灯を選ぶことができました。 さすがに長い客商売のご体験から人心掌握に長けておられるというか、けっして相手に不快感を与えないしゃべり方で、わたしたちは「うーん、そうか。なるほど」と、つい納得してしまいます。 Kさんの口のはさみかたは、独特です。そしてその意見は、ときとして特異なものです。でも、おうおうにして目からウロコが落ちるような見方からの発言です。異色ではあるかもしれませんが、わたしはKさんのような人が赤坂にとって無視できない貴重な存在だと思っています。 商店街振興組合 エスプラナードアカサカ 理事長 城所 ひとみ 商店街振興組合エスプラナードアカサカ 〒107-0052 東京都港区赤坂3-10-5 赤坂クインビル4階 TEL:03-5561-9125 FAX:03-5561-9128