城所理事長コラム 〜第27回〜 「エスプラナードエトワール」 吉崎さんのところへ、そのM教授にかいていただいた一枚の企画書を持参しました。すると吉崎さんは、とにかく「わかりました。では、それでいくとして次の作戦を」と、さらに秘策を練ることになりました。 ルミアートにするには、さしずめピラーボックスを施工していただいたシンロイヒさんにお願いするしかありません。でも同社は建設省から工事受注する口座がひらかれているわけではなく、それを正規の手続きで申請していたら大変な手続きやら手間がかかり、要する時間も何ヶ月かかるかわかりません。 ふつうだったら、絶対に無理な相談です。でも吉崎さんの特別な計らいにより、それは事後処理をするということで、とにかくシンロイヒさんに天井の絵を描いてもらうことにしました。 地下遊歩道のごく一部の天井にだけ処理するわけですが、それでも実際にはルミアート処理の作業も含めて徹夜同然の突貫工事をしてもらうことになりました。 さて平成十一年六月二日、赤坂地下公共駐車場の竣工式当日を迎えました。 式典には、錚々たる顔ぶれが揃っていました。式が始まると、当時の建設大臣からご挨拶をいただき、続いて港区長のご挨拶、さらには建設工事に関係した各位の挨拶が続きました。 不肖わたしも、発案者を代表して挨拶させられました。さて、そこが、吉崎さんのアドバイスもあって練った秘密作戦の最後を飾るイベントを披露するタイミングです。 わたしは振興組合エスプラナードアカサカ理事長として、まずは、「本日は、まことにありがとうございます」と紋切り口調でご挨拶しました。 しばらく話してから、わたしは、さて「どうぞ皆様、お座りになっておられる頭の上の天井をご覧になってください」と話題を切り替えました。 その瞬間です。それまで明るく照らされていた会場の蛍光灯が、すべて切られました。そのように電源を切ることは打ち合わせ済みです。 一瞬その地下が真っ暗闇になったのもつかの間、天井に向かって光が射しました。そこは星空でした。 そして流麗な音楽が響くとともに、そこに天の川を渡る白鳥の姿がルミアートで浮かび上がったのです。 お〜っ、というどよめきが起きました。 そして、しばらくして万雷の拍手です。建設大臣も、建設省の並み居るお偉方も、みんな拍手をしていました。 わたしも、われながら幻想的な情景にうっとりしました。意図したオープニングセレモニーの演出効果は満点でした。 やがて会場が再び明るくなりました。吉崎さんとわたしは、ウィンクしました。それを、やはり出席いただいていた前任のSさんも、にこやかに眺めておられました。 わたしは、やおら「いかがでしょう。このようなルミアートで、この百二十メートル全ての地下遊歩道の天井を彩っていただきたいのですが・・・・」と挨拶を締めくくりました。 その一言も、二人で練った秘策の一つです。 つまり、会場には建設大臣が直々に列席なさっています。幹部とはいえ吉崎さんが正規の手続きで案件を上司にあげていったら、その過程で予算その他の問題で一悶着あるのは避けられません。 そこで、セレモニー本番で訴えよう・・・・そうすることで、ほとんど上意下達でトップの決済が下りるようになる方向で画策したというわけです。うれしいことに、実際そのように進みました。 さて地下鉄「赤坂見附」駅で降りて改札口を出て真っ直ぐ行くと、左手に地上への出口がありますが、そのまま直進すると弁慶橋のたもとに上がり、紀尾井町のホテルニューオータニ方向に出ることができます。 その地下通路の天井がルミアートで処理された遊歩道、その名も「エスプラナードエトワール」と、エスプラナードアカサカとはイメージで一本に通じるネーミングがなされています。 朝五時から夜中2時まで三十分ごとに、毎回三分間ほど、その天井は、まさに夜空のページェントで彩られます。 わたしが竣工式の挨拶で訴えたとおり、そこは赤坂の名所の一つとなり、その遊歩道を歩く通勤客や赤坂を訪れる人々の憩いの空間になっているはずです。 ちなみに、このルミアート遊歩道を思いついたのがわたしで、それを描いたのがシンロイヒ社の助成デザイナー、そして建設省のほうでイベント用の音楽を特別に手配していただいたその作曲者もE.Hさんという女性でした。 というわけで偶然とはいえ、おしゃれな「エスプラナードエトワール」は、まさに女性の作品だということを申し添えておきます。Eさんが「ひとみ」と、わたしと同名だったのも奇しき因縁と思った次第です。 商店街振興組合 エスプラナードアカサカ 理事長 城所 ひとみ 商店街振興組合エスプラナードアカサカ 〒107-0052 東京都港区赤坂3-10-5 赤坂クインビル4階 TEL:03-5561-9125 FAX:03-5561-9128