城所理事長コラム 〜第7回〜 「口説き上手の旦那衆に乗せられました」 うつむいてしまったわたしの耳には、みんなの「それがいい、それがいい」という声がだんだん遠のいていくようでした。 代わりに、その潮騒のようななかから、右隣に坐っていた人のつぶやきが伝わってきました。 役員でも一番ご高齢のH.Kさんという方で、はじめはぶつぶつ小さな声でお経を唱えていらっしゃるのかなと思ったのですが、そのうちはっきり聞こえたことには「城所さん、会長を引き受けて下さいよ。そうしたら、わたし一所懸命お手伝いし、応援します。ぜひ引き受けて下さいよ」と、同じことを、同じ調子で、何べんも何べんも繰り返しておられたのです。 羽賀さんは、古くからこの土地に住んで、ご自分の料亭を閉められてビルに建て替え、そのオーナーさんとして商店会の役員となられたとのこと。見るからに職人気質で、派手な振る舞いもなく、何事にも一所懸命に取り組んでおられる姿が印象的です。 そういう誠実な方の、全くお経か呪文のようなつぶやきに、ふっと背中を押されたように感じました。 そして、ふと「そうか、わたしが会長になったら、みなさんが後押ししてくださる」という心境が胸中をよぎったのです。 一方で、誰か偉い人が長になり一人ふんばって街がどうなるものでもあるまい、振り返ってみて誰も従ってこないようであれば何もできない・・・といった、この間いろいろな商店街を訪れてみて、さんざん聞かされたことが耳に残っていました。 ましてやボランティアである商店街の活動のことですから、アイツにまかせておけばいいとか、独裁的なヤツには好きなようにやらせておけばいい、といった雰囲気が支配的で、その結果、多くのメンバーが背を向けてしまう商店街活動がはびこっていることも勉強していたところでした。 ところが、わたしには応援したり支えてくださる方がいらっしゃる・・・街づくりというのは一人でどうこうできるものではなく、みなさんで支え合い、助け合ってこそのものだねなのだ、みなさんが後押ししてくだされば、かよわい女の(?)わたしでも務まるもかもしれない、と、あれこれ考えが頭を巡っていました。 心は千々に乱れましたが、その長が女だからこそ、男性のみなさんが支えてくださるような機運が盛り上がり、そうして扇のカナメとしての務めを果たせるのかもしれないと思いはじめて、わたしはいつしか顔を上げ「お引き受けします」と口にしていました。 そういうドラマティックな選出劇のままに、こうして「日本でも初めて、それも一人っきりの女性理事長(当時は商店会の会長)」が誕生したというしだいです。 世の商店街というものが、まあ功なり名を遂げた六十過ぎの年輩の男性が会長職に就いているという例がほとんどのなかで、まだ四十代に入ったばかりのヒヨッコ女会長だったのです。 商店街振興組合 エスプラナードアカサカ 理事長 城所 ひとみ 商店街振興組合エスプラナードアカサカ 〒107-0052 東京都港区赤坂3-10-5 赤坂クインビル4階 TEL:03-5561-9125 FAX:03-5561-9128