城所理事長コラム 〜第5回〜 「続〜道路環境整備部長にさせられました」 さて道路改修の受け皿としての商店街としては、せっかくわがもの顔に道路脇を占拠していた電柱が撤去されるというのなら、これを機会に通りを整備しようと考えるのは自然な思いつきです。 そこで商店街として「道路環境整備部」というものを設けることになり、文字どおり「道路環境」として物事をかんがえようということになったのです。 新設の部会には新人の役員を充てようという、これまた暗黙の了解からか、わたしが新任の道路環境整備部長を仰せつかってしまったのです。 というわけで、なんとなく道路環境整備部長にさせられてしまったわけですが、でも、なった以上はなにか具体的に方向性を見出さなければならないと思うのは、新米ほやほやの気負いとでもいうものでしょうか。 わたしは道路関係の建設業者に専門的な話を聞きに行ったり、あちこちの商店街通りを見学に行きました。 そのなかには、その後も親しくお付き合いし、なにかとアドバイスをいただいたり協力しあっている商店街もいくつかあります。 とりわけ港ヨコハマの元町通り商店街は、個人的にはわたしのお気に入りの街です。 なんといってもその立地が、山の手の商店街で、港の見える丘から下ったところで、そのすぐ先に港が広がっており、また外人も多くてエキゾチックな要素を兼ね備えています。 ところで赤坂という土地柄は、東京都心でも起伏に富んだ場所にあって、けっこう縁も多く、お堀の水にも映え、また外人も多くて国際的な街です。 そうした商店街が置かれている条件が似ていて、横浜の元町通り商店街は赤坂の街づくりに参考になりそうな表情をしているように思えました。 そこを訪れてみますと、商店街を貫く通りは、曲がりくねっています。 それは、散策しながらショッピングする人たちが危険にさらされないよう、車がスピードを出して通り抜けられないようにとの工夫からです。 うねる通りの随所に、さらにぐっとくり込んだような空きスペースが確保されています。 この商店街で主たる買い物客というのは背後に控える丘の上の山の手の住人で、その主婦たちの足は車。というわけで、ちょっと買い物したりお茶を飲んだりするときには、そこに駐車しておけるようにかんがえられているのです。そのほかにも、離れた場所にスペースの広い駐車場が確保されているようです。 また元町通り商店街には、道路の一部に街路灯がありません。道路の両側はほとんど低層のビルですが、その一階部分の軒がアーケード代わりに張り出していて、そのいってみれば軒先に照明灯がついていて、これが街路灯の役割を果たすよう設計されています。 そうしたきめ細かい配慮や工夫には、ほとほと感心しました。そのように感心して、その商店街(協同組合元町SS会)の当時のN会長にお会いしたら、ん?と思うようなお話を聞かされ、ハッと気づかされたものです。 Nさんは「街づくりをするときになにがいちばんその障害になるとおもわれますか?」とお尋ねになります。お話を伺いに行ったのに逆に質問されてしまいました。ちょっと頭をかしげていましたら、Nさんが「それはヒトです」と。 てっきり外からくる人のことかと思いましたら、いえ「赤坂もそうでしょうが、こういう古くからある商店街というのは、とにかくなにかしようとすると、オレの目の黒いうちは絶対に変えさせないなんて息巻く古参が牛耳ろうとしましてね、アイツがやるならオレは反対する、というそういうような低い次元の説得に難儀するんですよ」とおっしゃるのです。 そのお話には、正直そのとき理解が及んだわけではありません。わかったような、わからなかったような、でも実地に素晴らしい商店街と「美しい街づくり」に取り組んでおられる様子を拝見できただけで感謝感激し、そのときは帰ってきました。 ようするに「商店会の運営も、また商店街をどうするかという観点でも、結局はヒトの問題が、究極の問いであり、答えになるポイントです」ということが真に理解できたのは、しばらくたって、わたしの次のステップでのことでした。 ともあれ、ふだんからフットワークが軽いと自認しているわたしとしては、このようにあちこちの商店街を見て歩くという時間は、けっこうたのしいものでした。むしろ新任部長としての役得とすら思っていたほどです。 でも、そういうあちこちの商店街を巡り歩いて、堅苦しくいえば情報収集や事例研究の作業を楽しむというのが、つまりはいわば助走の段階だったのだと気づいたのは、もう少し後のことです。 商店街振興組合 エスプラナードアカサカ 理事長 城所 ひとみ 商店街振興組合エスプラナードアカサカ 〒107-0052 東京都港区赤坂3-10-5 赤坂クインビル4階 TEL:03-5561-9125 FAX:03-5561-9128